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「が」と「は」について 07・4
こんにちは。「が」と「は」について少し書いてみました。
少々わかりにくい話ですが、暇のある方はごゆっくりどうぞ。
1「が」の基本(1):中立描写 Neutral description
人が言語で世界を描写しようとして、そこで起きていること、起きたことの[全体]をできるだけ[そのまま]表そうとしたときのことを考えます。
そこで起こっていること(現象)の「参加者」を名詞で表し、その動きを動詞で表します。名詞と動詞の関係を[格助詞](ガ・ヲ・ニ・デ・・・)で表します。
「公園のベンチで」
公園のベンチに男と女が座っている。 1
男が女に何か言う。 2
女が立ち上がる。 3
男が女の顔を見上げる。 4
女が立ち去る。 5
一つ一つの出来事を、それだけを(前後のつながりを考えず)描写していて、昔の無声映画をぼんやり見ているようです。
これをすべて過去形にすれば、過去の出来事の描写になります。
公園のベンチに男と女が座っていた。 1
男が女に何か言った。 2
女が立ち上がった。 3
男が女の顔を見上げた。 4
女が立ち去った。 5
ここで、格助詞「が」は、動作を行う主体 agent/do-er を示すだけです。「新情報」とか、「焦点」とか、そういう説明の用語は必要ありません。
それは、他の格助詞「を・に・で」などでも同じです。現象を描写するため、その構成要素である名詞と動詞の関係を示す、それだけのために使われています。「が」も、本来はそういうものです。
もし、「新情報」ということばを使うなら、上の「公園のベンチ」の文はすべて、その文全体が「新情報」になっています。一つ一つが新しく起こったこと、話し手も聞き手も予想していなかったこととして、描写されています。
(どんなことがあったか) (どんなことがあったか)
公園のベンチに女が座っていた。 公園のベンチに男と女が座っていた。
(ほかに、何か起こっていたか) ←まちがい (何が起こったか)
細かい雨が降っていた。 男が女に何かを言った。
(何が起こったか) 書きなおし→ (何が起こったか)
男がやってきた。 女が立ち上がった。
(次に何が起こったか) (何が起こったか)
男が女に何か言った。 男が女の顔を見上げた。
:
「何があったか」「何が起こったか」という質問は、この世界の描写として、何かがあり、何かが起こるということだけを前提としていて、特にその世界の中の[何かについて]質問しているわけではありません。
その答えとしての文は、全体が「新情報」です。
学校の門のところに誰かが立っている。
隣の部屋から音楽が聞こえてくる。
冷蔵庫にプリンがあるよ。(おやつの時間に、親が子供に)
おや、雨が降ってきた。
きのう、佐藤さんがメールをよこした。
きょう、僕が宿題をやっていかなかったので、先生が怒った。
西の空が真っ赤だ!
うわー、ビールがうまいねえ!
動詞文では「が」の文は珍しくありませんが、形容詞文では使い方が限定され、この意味の「が」の文はあまり使われません。
2「は」の基本(1):主題 Topic/Theme
しかし、上のような文ばかりでは、人間の情報伝達communication/discours としては不充分なものです。それぞれがある一つの情報を表しているだけで、話がつながりません。
上の「公園のベンチ」で起こった一つ一つのこと自体はそれぞれつながりがあり、全体で一つの出来事になっていますが、それを描写した文は、一つ一つがバラバラで、話し手は「一つの話」を作ろうとしていません。
人間は、起こっていることをそのまま描写する以外に、その出来事の中のある要素に注目し、それを取りだして、[それについて]何らかの情報を述べたり、求めたりします。それを文の「主題」とし、それについて語るわけです。
「レストランで」
男がレストランで食事をしている。 1
ドアが開いた。 2
男は顔をあげた。 3
女が入ってきた。 4
男は女を見た。 5
女は空いたテーブルを探していた。 6
男は女の顔を見ていた。 7
女も男を見た。 8
男は、自分の前の席を目で示した。 9
女は男のテーブルに近づいた。 10
1は場面の描写。2はそこで新しく起こったことの描写。
3で、話し手は「男」に視点を置き、その男[について]情報を付け加えています。「ドアが開いた」ことに対して、「男」はどう反応したか。
ドアが開いた。
(次に何が起こったか)
男[が]顔をあげた。
ではなく、
ドアが開いた。
(男は? 男はどうしたか)
男[は]顔をあげた。
という「話のつながり」を作っています。
4は、「男が顔をあげた」状況で、何が起こったか、という描写。
5で、話し手は引き続き「男」を主題にし、「男についての話」を続けています。
女が入ってきた。 4
(男は? 「顔をあげた」男はどうしたか)
男は女を見た。 5
(では、女は? 「入ってきた女」はどうしたか)
女は空いたテーブルを探していた。 6
6で、話し手は「入ってきた女」に注目し、「女」に主題を移します。「女」について、「何をしたか」という情報を述べます。
そこから、「男」と「女」を交互に主題にして、「男と女」の話を続けていきます。ドラマが始まります。
[主題とは]
主題の文、「~は」の文は、その名詞について、ある情報を述べる文です。
主題+は、[主題に関する情報]。 Topic - Comment
という形の文です。
「は」のあとに「、」を打つことが多いのは、「そこで切れている」という話し手の気持ち、つまり文構造を表しています。
(それに対して、上の「~が」の文は、全体で一つのまとまりです。)
話し手は、聞き手に対して「主題」を示し、今からこれについて話すぞ、という態度をとります。聞き手は、主題を示されると、それについての情報がその後に来るのだと理解します。
主題は、「それについて情報が述べられるもの」、それについて語られるべきもの、です。ですから、主題は、話し手と聞き手にとって知られているもの、「何について話しているか」が明らかであるものでなければなりません。
(ですから、「疑問語+は」という形、「×だれは~」「×どこは~」という質問文はありません。必ず「だれが~」「どこが~」となります。)
[旧情報・ハと質問文]
そこで、「~は」は、「既知」(Known)の概念に付くとか、「旧情報」(Old Information)を表す、というふうに説明されます。
しかし、この「旧情報」というのはよくわからない概念です。
たとえば、人を捜しているとき、電話で、
「すみません、そこに田中さん[が]いますか」
というのはちょっと不自然で、
「すみません、そこに田中さんはいませんか」
というのが普通です。(「いませんか」と否定で聞くのは、「いることを期待している気持ち」の表れとして、ここでは問題にしません。)
問題は、なぜ「は」なのか、です。
この電話では「田中さん」という言葉が初めて使われています。仕事をしているとき、電話がかかってきて、とると、
「受付の佐藤ですが、営業の田中さんはそちらにいらっしゃいませんか」と聞かれるわけです。
質問者も、聞かれた人も、「田中さん」を知ってはいるのですが、この文脈Context では、話に出てきていません。この「田中さん」は、「旧情報」でしょうか。
ここで、「田中さん」は、話し手も聞き手も、それが誰だか知っていて、誰「について」話しているのかすぐわかるような人であることが必要です。「それ」について、情報を求めているのですから、「それ」は、両者に知られているものでなければなりません。「既知」がそういう意味なら、たしかに、主題は既知のものでなければなりません。「は」を使った質問文の形は、
田中さんは、そこにいますか。
田中さん(主題)+は、[聞きたい情報]+か。
となります。
[ガと質問文]
では、「が」ではなぜ不安定なのでしょうか。
「すみません、そこに田中さんがいますか」
という文が表しているのは、
[[そこに田中さんがいる]ということが起こっている]か
というようなことです。「~が」の文ですから、ある事実の存在・非存在を聞いています。
これは不自然でしょう。「田中さん」の質問文では、「田中さん」について、「いるかいないか」が聞きたいのです。ですから、「田中さんは~」と「田中さん」を主題にして聞くのが自然です。
「~が」を使った質問文は、例えば、
(雨のような音がするので)「雨が降ってきたの?」
と質問するような場合です。これは、
[[雨が降ってきた]ということが起こっている]か
という質問になります。「雨が降ってきた」全体が一つのまとまりになっています。
「雨」について質問するなら、
(さっき降っていた)「雨はもう止んだ?」
のような文になります。一般的な「雨」ではなくて、話し手と聞き手の頭の中にある(「既知」の)、(さっきの)「雨」についての質問です。
「雨は降ってきた?」
という文なら、「天気予報で降ると言っていた、話し手が心配していた、その雨」が「降ってきたかどうか」という質問です。
「が」を使った質問文で、より不自然なのは(そして、日本語学習者がよく使うのは)、
田中さんがどこにいますか。
のような質問文です。「どこにいますか」という疑問語を含んだ質問は、疑問語の部分が「聞きたい情報」であるわけです。それなら、上の、
田中さん(主題)+は [主題に関して聞きたい情報]か。
のような主題をもった「は」の文にしなければなりません。
田中さんはどこにいますか。
です。
主題の「田中さんは」の部分だけでも、質問の意味合いがあるのです。
田中さんは? (田中さんは)どこにいますか?
[That damn densha...]
駅で、電車を待っているとき、
A「(電車は)まだ来ませんねえ。遅れているんですかねえ。」
B「そうですねえ。(電車は)遅いですねえ。」
(数分後、自動販売機でコーヒーを買っているAに)
B「あ、来ました。電車が来ましたよ。」
初めのやりとりでは、AとBは、「電車について」、それを主題にして、話をしています。「は」を使っています。
それに対して、最後の文では、Bは「電車について」「来たかどうか」を報告しているのではなく、自分が見たことを、そのまま「一つの事実として」Aに伝えています。
「電車は来ましたか、まだ来ませんか」
という質問に対して、思考し、判断し、
「(電車は、とうとう)来ました。」
と落ち着いて述べるのではなく、その時、見たままを、
「あ、来ました。電車が来ました。」
と報告したのです。
この違いは、過去の話として文章にまとめるような場合でも同じです。
1-1 昨日、駅でAさんと電車を待っていました。電車[は]なかなか来ませんでした。
2 Aさんは、コーヒーを買って飲んでいました。
3 結局、電車[は]20分ほど遅れてきました。
2-1 昨日、駅でAさんと電車を待っていました。
2 電車[は]なかなか来ませんでした。
3 Aさんが2杯目のコーヒーを販売機で買おうとしたとき、やっと電車[が]来ました。
1の例では、1-3でも「電車」を主題として扱い、「は」を付けています。
しかし、2の例になると、2-2では主題として「電車は」としていたのに、2-3では「電車が」にしています。
これは、話し手が「Aさんがコーヒーを飲もうとして、販売機で買っていたとき」という形で場面を設定し、「その時、何が起こったか」を述べようとしたためです。
言い換えれば、2-2と2-3の間で、小さな場面の転換を作っているのです。
同じ文を使って主題を変えずに続けようとすれば、次の3のようになります。
3-1 昨日、駅でAさんと電車を待っていました。
2 電車[は]なかなか来ませんでした。
3 電車[は]、Aさんが2杯目のコーヒーを販売機で買おうとしたとき、やっと来ました。
これでもいいのですが、なんとなく単調な感じがします。特に、すべてを過去のこととして、今から振り返って話している感じです。
それに対して、2のほうが、「そこで起こったこと」をそのまま伝えるような感じがするので、その場にいるような雰囲気が(少し)あります。
「は」を使って主題を続ける文と、「が」を使って事実の報告をする文と、この使い分けが、例えば小説などではうまく行われているわけです。
まだまだ話は終わらないのですが、とりあえずこの辺で休憩。
saburoo
Edit:「公園のベンチ」のまちがいを書きなおし
Last edited by saburoo (2007-04-16 07:08:20)
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「が」と「は」の差異は、大切な主題なのだから、深い興味を持って全部読んで、休憩後の話を待っています。時間を割いて、そんな話について書かれてありがとうございます。わたくしは、「新情報」をお楽しみに待っていますぞ! ![]()
蒔かぬ種は生えぬ
Offline
三郎先生、そんな話ありがとうございます。僕は日本語でまだ下手ですから、全部わかりませんですが、一所懸命勉強します。
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手加減せずに私の日本語を直してください
Offline
サブローさんは、「先生を言わないでくださいませ」くらい言ったのだから、そんなほうがいいですね、Pazu。
蒔かぬ種は生えぬ
Offline
そうですか… それでは、ごめんね。
Edit: I've finally finished reading this. This was a heavy reading for a beginner like me, and it would be impossible without rikaichan. Nonetheless, I think I got the gist of the text, and it's one of the most informative pieces I've read about 「が」 and 「は」. Definitely helped me understand them a bit more.
Last edited by pazu (2007-04-18 09:55:46)
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手加減せずに私の日本語を直してください
Offline
本当、これを読むだけのことはあるんですよね。内容だけではなく読む練習でもあります。ですから、サブローさんの本を読んだ方がいいと思います。
Leave others their otherness. -- Aratak
There is no can't. -- Duun
Offline
私的に、「が」の意味は簡単ですけども、「は」の方が難しいんですよね。
うまい書くことは、思いつけない。まぁ、変なことはいっぱいあるけど・・
Offline
これは意味ではないですが、「が」の部分は文自体の中にありますが、「は」の部分は文自体の外にあります。ですから、「《『は』の部分》は、《『は』の部分に付いての情報》」でどの部分にも「が」が入ってもいいです。例えば、「あの魚は、彼が食べた」、「彼が食べた魚は、美味しかったらしい」。勿論、「が」が入らなくてもいいです。「あの魚は、美味しかったらしい」。
「あの魚は、美味しかった」と「あの魚が美味しかった」の違いは、「あの魚は、美味しかった」で他の魚に降れていませんが、「あの魚が美味しかった」で、他の魚が美味しくないと暗示する事が出来ます。
間違いがあれば、御免なさい。でも、これは私の解釈です。確かに、「は」と「が」の問題はこんなに簡単でもないですね。
[edit]私も、サブローさんのポストからいい情報を得ました。
Last edited by taniwha (2007-04-16 20:25:49)
Leave others their otherness. -- Aratak
There is no can't. -- Duun
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小論は可也面白かったし、 私が結構良く啓発されました。 小論は、完全には、分からなかったに違いありませんね。 ですが、 確かに、 「「が」と「は」の話」を読む喜びに浴する前に理解していたより、 「が」と「は」の差異は、 よく理解しているのが、 言語力の点で秀でたサブロウさんの御陰で、 本当にありがとうございました。 サブロウさんが延長するのを待望しています。
Last edited by ReceptviCanatvr (2007-04-16 22:19:41)
Offline
こんにちは。
こういうわかりにくいものを書いて、どれだけの人が読んでくれるのだろうかと少し心配でした。
(taniwha さんと、それから Faumdano さんは、読むかもしれないと思いました。なにせ「十二国記」ですから...)
予想以上の好評をいただいて、うれしく思います。自分で何度も読み返して、もう少しわかりやすく話を進められないものかと思うのですが、ともかく、もう少し書いておきます。
3 「が」の基本(2):「焦点」 Focus (「指定」)
最初に述べた「が」の基本的な用法、「主体」を表す用法の他に、「が」は「情報の焦点」を表すと言われることがあります。
太郎、次郎、三郎の三人の中で、誰が昨日ここにいたか。
太郎がいた。
というような例の中の「誰が」「太郎が」の「が」です。
これは、「中立描写」の、
あ、あそこに太郎がいる。
という場合の「が」とは違う、というのです。
しかし、それは「を」や「に」でも同じことではないでしょうか。
ラーメン、うどん、そばの中で、ゆうべ何を食べたか。
ラーメンを食べた。
質問文の「焦点」の「何を」と、それに対する答えとしての「ラーメンを」
の「を」は、確かに焦点の位置にあります。しかし、それは「を」の働きではありません。「を」は「対象」を示しているだけで、「焦点」であるのは、「何」という疑問語を使った疑問文で、その「疑問の焦点」(その疑問文で聞きたいこと)の「何」に付けられているからです。
「が」も同じです。上の「誰が」は、疑問文の焦点である「誰」に「が」が付けられており、その答えの焦点である「太郎が」にも「が」が付けられているのですが、「が」が焦点を示しているわけではありません。
[「は」と焦点]
すでに述べたように、主題を示す「は」は焦点となる語には付けられません。 主題は、それについて情報を述べられるべき語です。情報の焦点は、主題のあと、文の後半にあります。
主題+は、[文の/情報の 焦点]。
例えば、
太郎は、何を食べたか。
太郎は、ラーメンを食べた。
そのラーメンには、何が入っていたか。
そのラーメンには、チャーシューやメンマが入っていた。
ラーメンは、どこで売っているか。
ラーメンは、駅前の食料品屋で売っている。
その食料品屋では、ラーメンの他にどんなものを売っているか。
その食料品屋では、いろいろな食料品を売っている。
主題となるのは、
主体「太郎」
場所「ラーメンに」
対象「ラーメンを(売る)」
場所「食料品屋で」
など、いろいろな格助詞のついた「補語(格case)」です。
また、焦点となっているのは、「何を」「何が」「どこで」「どんなものを」などです。
主題: ~が、~を、~に、~で ⇒ ~は、~には、~では
焦点:誰が、何を、どこに、どこで
主題の「は」は、「が・を・に・で」など、いろいろな格助詞のつく「格」を「主題化」します。
「は」:「が」
の対立なのではなく、
「は」:「が・を・に・で・・・」
の対立なのです。「が」は格助詞の中で特別なものではありません。
焦点のほうも、「が」だけではなく、「を・に・で」なども同じように焦点になれるわけで、つまりは、「が」に「焦点を示す」という機能があるわけではありません。
A-1「は」は、主題となる名詞につき、主題であることを表す。
A-2「が」は、主体の名詞につき、主体であることを表す。
B-1 主体の名詞が主題になるときは、「が」でなく「は」が付けられる。
B-2 主体の名詞が文の焦点となるときは、「が」のままである。
このB-2の場合に、「文の焦点となる主体には「が」が付けられる」と言うべきところを、
「焦点となる主体には「が」が付けられる」→「「が」は焦点を示す」
と、多少誤解して言っているのが、
「が」の用法:「焦点」を示す
という、よく言われることなのでしょう。
要するに、焦点には「は」は付かないから、「が」が付く、というだけのことなのです。
ただ、教育的には、「は:主題」「が:焦点」と教え、そう覚えてしまっても、実際の使用法がわかっていれば、それほど問題はないと言えるでしょう。
......................................................................
この続きをどう書いたらいいか迷っています。
saburoo
Offline
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